遺言とは
日常用語としての「遺言」は、形式や内容にかかわらず広く故人が死後のために遺した言葉や文章を指しますが、民法上の法制度における「遺言」は、故人の死後に自己の財産の帰属を決定するために行う最終の意思表示とされています。
遺言とは、故人の意思として尊重され、その意思を実現させる為に制度化されたものです。
遺言で出来ること
遺言には自分の死後に実現を願うどんなことでも書くことができます。しかし、遺言に書いたことがすべて実現されるわけではなく、効力をもつ主な事柄は以下の通りです。
- 財産について(相続分の指定・委託、遺産分割方法の指定、委託、遺産分割の禁止、遺言による財産の贈与、寄付行為、信託の設定、相続人相互の担保責任の指定など)
- 身分について(相続人の廃除またはその取り消し、認知、後見人・後見監督人の指定)
- その他(遺言執行者の指定・委託、祭祀承継者の指定、特約事項)
- 任意事項(法的な効力はありません)
遺言があれば
遺言による相続は、法定相続に優先するものですから、法定相続人以外で生前にお世話になった方に財産を遺したい場合や自分が生活を支えていた方に法定相続以外の割合で遺産を分配させたい場合などは遺言が最良の策と言えます。
現在の制度は、遺言でできることに厳格な要件を定めた上で、遺族の地位や生活の保護も考慮したものと言えるでしょう。遺言書を残しておくほうがよいケースを具体的に記します。
①子供のいないご夫婦/内縁関係にあるご夫婦
夫が先に亡くなった場合、夫は残された妻の生活のために自分の財産を全て妻に残したくても、夫に親や兄弟姉妹がいて、遺言がない場合には、その財産は妻一人のものにはなりません。家が唯一の財産であった場合、遺産分割のために妻は家を手放さなければならないことにもなりかねません。
また、入籍していない妻の場合は、戸籍上は他人であり相続権はありません。事実上夫婦として長い年月を共に暮らしてきても、遺言がない場合には、夫の肉親で全ての財産は分配されてしまいます。
相続人の範囲と相続順位
③事業経営者や農業経営者
工場や農地など基盤となる財産が複数の相続人に分割されてしまうと事業そのものの成立が難しくなる場合があります。
事業を継承してゆく場合には、後継者の選定及び事業に必要な資産を遺せる様な遺言書の作成、また相続税対策も予め考慮するとよいでしょう。
相続税対策
④独身でご高齢の方
配偶者、子、親が亡くなっている場合の法定相続人は兄弟姉妹(甥姪)となります。遺言がない場合、亡くなった人を誰が世話してきたかなどにより相続が円満に進まない場合があります。
⑥障害を持つ子供に重点的に配分したい方
遺言の作成
遺言は定められている方式に従っていなければ法的な効果はありません。民法が定めている遺言には、大別して普通方式と特別方式の2種類があります。
【普通方式】は、遺言者が自分の好きなときに自由にできるのが原則で「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があり、一般的に利用されます。
【特別方式】は遺言者が危急の状態や、隔絶された特別な状況にあり、普通方式の遺言ができない場合に利用される特殊な遺言方式です。
自筆証書遺言
一定の書式にのっとり誰の補佐も受けずに遺言者が自分で全て記入する、遺言の中では最も簡単に作成することができる形式です。
簡単にできる一方で、紛失や法的に無効になる恐れなどもあります。
条件・ポイント
- 自筆である…用紙、文字は自由。ワープロ、パソコンで作成したものは無効になります。すべて自筆。
- 署名がある…遺言者を特定するために必要。俗名でも断定できればOK。
- 押印がある…署名に押印が必要。実印でなくてもOK。サインは無効です。
- 日付がある…「平成○○年○○月○○日」で記載。
もし他の遺言が見つかった場合、日付の新しいものの内容が採用されます。
※封筒の封はしなくてもよいが、相続人又はその代理人が立ち会って家庭裁判所で開封する必要がある。
(民法1004条3項)検認について
※加除・変更は、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記してその変更場所に押印すること。
(○行目削除#字 加入#字 氏名)
線(1-2本:下の文字が見えるように)を引き押印
変更の場合:「○○」を「△△」に変更。
できるだけ訂正はしないで書き直した方が無難です。
秘密証書遺言
遺言の内容を誰にも知られたくない場合には、秘密証書遺言にします。自書を原則とし、内容を秘密にできますが、その存在を公証人に明らかにしてもらうための手続きが必要となります。
条件・ポイント
- 遺言者がその証書に署名し押印すること
- 遺言者がその証書を封じ、証書に用いた印章を用いこれを封印すること
- 遺言者が公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出し、
自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名、住所を申述すること - 公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し押印すること
など
「公正証書遺言」
公証役場で公証人が作るため、遺言の中でもっとも確実な効力をもちます。公証役場なので無効になる可能性は低く、原本が公証役場に保管されるため、改変や破棄、隠匿などの危険性もありません。公証役場での手続きや費用の面での負担を伴います。
公正証書遺言の作成手順
- 1.遺言の内容を考えます
- 財産の内容と、誰が相続人であるか、相続または遺贈するのかを予め整理します。
相続税や各相続人の遺留分、事業承継問題などを考慮しながら作成します。 - 2.必要書類を用意します
- ①遺言者の印鑑登録証明書
- ②遺言者と受遺者の戸籍謄本
- ③住民票(相続人以外の者に遺贈する場合)
- ④財産特定のための不動産の登記簿謄本・固定資産評価証明書、法人の登記簿謄本、預金通帳のコピー、証人の住民票
- などを準備します。
- 3.証人2人以上を決めます
- 未成年者、自ら署名することができない人、推定相続人、受遺者、推定相続人又は受遺者の配偶者、直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族等、公証人の書記や従業員などは証人になれません。
- 4.公証役場において公正証書遺言を作成します
- 公正証書遺言作成に出向く日時は、遺言者、公証人、証人2人以上の予定を調整して決めておきます。
公証役場において、当日、遺言者が遺言内容を口述し、公証人が書面にしていきます。
検認について
封印のある遺言書を預っている方、発見した方は、すぐにその遺言内容を見ることはできません。封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人またはその代理人の立ち会いがなければ開封することができません。遺言者の死亡を知った後、ただちに遺言書を家庭裁判所に「検認」の手続きを申し立てる必要があります。
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
検認の手続き
- 1.検認の申立
- 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。
- 家庭裁判所に提出する必要書類は、次のとおりです。
- ①検認申立書
- ②遺言者の出生から死亡まで連続した戸籍除籍謄本・改製原戸籍謄本
- ③申立人及び相続人全員の戸籍謄本
- ④遺言書の原本(開封されている場合は、写しを添付)
- 2.検認期日の通知
- 申し立てから約1か月後に、家庭裁判所から法定相続人全員に、遺言書検認の立ち会い日程の通知がなされます。
申立人は、必ず立ち会う必要がありますが、他の相続人は、理由を書面で提出して立ち会わないことも可能です。 - 3.検認の実施
- 立ち会い日時に遺言書を持参し、検認手続きをします。
当日終了後、遺言書に検認済証明をつけてもらい返還されます。 - 4.検認済の通知
- 検認に立ち会わなかった相続人等に「検認済通知書」が通知されます。
ご自身を取り巻く環境や資産状況など、お一人お一人に異なる事情をお持ちのことと存じます。遺言書作成、ご質問・心配事などありましたらお気軽にご相談下さい。
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